「魚小」 店主の独り言

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「職商人」に見る経営の本質

アナログ経営のモデルは中小企業にあり

 最近の大企業の経営が、デジタルな発想に偏ってきている現実です。

事実、四半期という短期的な決算に一喜一憂し、数値的なデータを重視する米国流の経営が一般的になっています。

それを全面的に否定するわけではありませんが、行き過ぎを是正して「アナログ経営」に少し針を戻す時期に来ているように思えてならないのです。

 

デジタル一辺倒で「創造」を忘れるな

 そんなアナログ経営の1つのモデルが、実は中小企業にあります。

デジタル化が進む大企業では、数値化されたデータを解析し、コストとかリードタイムの短縮、人件費の削減といった項目に気を取られています。

一部では、そんなデジタル経営に偏って見かけ上の効率ばかりを追い、いかにモノやサービスを安くするかという低価格競争路線が、成長戦略の柱になっています。

懸念要因として、コストの削減や効率の向上とかばかりに頭がいってしまうと、企業活動で最も重要な「価値を創造すること」を忘れてしまうことです。

つまり、モノを創り出すというところに頭がいかず、創造に対して思考停止状態に陥ってしまうのです。

仮にコストがゼロ、効率が100%になったとしても、創造を忘れ、モノの価値までがゼロになってしまっては意味がありません。

 一方、大半の中小企業はアナログな部分が多く、数値で表せない熟練職人やベテラン社員の経験や技、勘などを大切にしています。職場は小さな組織なので、血の通ったアナログなコミュニケーションが交わされています。

この血の通った人の温もりのあるコミュニケーション、つまり社員同士の「深い対話」という原点に戻ることが、より強い、より元気な集団をつくる出発点になります。ここで集団が個を育て、個が集団を育てる好循環が生まれ、個と集団がひとつになるのです。

そんな「新・家族主義」を実践する中で仕事をしているのが、中小企業であることを見逃してはなりません。

 

「売り手」と「買い手」は一体不可分

 ここで注目したいのが、「職商人(しょくあきんど)」の存在です。

職商人とは、モノづくりに打ち込む「職人」であると同時に、そのモノをお客に自ら売る「商人」でもあります。

つまり、職人と商人の器量を兼ね備えた人たちです。多くの中小企業は、この職商人に近い存在だと言っていいでしょう。

モノを作って売るという行為は、買って使ってくれる人がいなければ成立しません。「作る」と「使う」、「売る」と「買う」という行為は、職商人にとって一体不可分なのです。

同時に、買って使ってもらうことが、次の作る・売るにつながっていくという循環の発想も、職商人のものです。

いいものを作ればお客がきっと評価してくれる。それが励みとなって、もっといいものを作ろうという前向きな力が湧いてくるのです。

 

常盤文克の「新・日本型経営を探る」より編集転記